TOKYO Snap Shots 色校編!

 

ワッツア!

 

さて6月。

ここ東京には次第次第にジメジメした季節がやってまいっておりますが

 

 

 

あいかわらずわたしはげんきです!

YO! おれが斉藤啓aka BDAP!

 

 

 

 

 

さて前回もブログで書きましたが

写真家中野正貴さんの写真集「Tokyo Snap Shots」がIBCパブリッシングから7月発刊〜。

 

 

それにさきがけて、今回は予告どおり色校正編を展開!

の予定だったんですが...

予算節減のためか本文208Pぶんの色校正紙が1部しか出てなくて...、

けっきょく印刷所に戻さざるを得なかったンです。(よって写真も無し)

 

 

しかもまたもや制作費の関係上、

本機校正(=本番の印刷機で刷られた色校正紙)でも

本紙校正(=本番の用紙を用いて刷られた色校正紙)でもなく

高精度のインクジェットにてそれ専用の用紙で出力された校正紙での色校作業。

いわばプロセス4Cを擬した高精度な簡易校正(簡易というには高品質なんだけどさ)。

 

大作家の写真集なんだから全ページ本機校正出すのが当然と思ってたのに

どーも殿下ピント狂っチャウ。

 

 

ま、この出版不況下、

制作費問題もうま〜くクリアしてこそのアートディレクション。

ビグザムに体当たりして宇宙(そら、ね)に散ってしまったスレッガー・ロウ風にいうなら

 

 

悲しいけどこれ現実なのよね。

 

 

 

 

 

とまあ、わざわざガンダム持ち出してブーたれててもしょうがないので

今回は窮余の策としてこの簡易校正の他に、

キーとなる写真のページを8見開きだけ本機で刷ってもらい、こちらと簡易色校を比較し、

全体の色バランスやメリハリの傾向と対策をだいたい予測し、そのうえで指示をするという段取りにさせてもらいやした。

色分解的にはバランスよく上手に製版してくれる印刷所だったのでこれでイケると判断、

本文全ページ校了とあいなりました。

 

 

 

そして

本書の顔になるカバーです。

 

 

 

このカバー写真の画像は中野さんと編集長と協議を重ね

だいたい30パターンの中から決定、

 

 

 

 

 

表4はスカイツリーです。

 

 

カバーにももちろん予算的縛りがあるので特殊加工なんぞはハナっから考えず、

写真の雰囲気を最大限ひき立てることを第一に考えた結果、

プロセス4Cにプラスして補色メタリックブルを入れることにしました。

 

 

補色とはですね、

通常の4色(シアン・マゼンダ・イエロー・ブラック)の版のほかに、

別版を新造し、プラス1色のインクを刷ることでさまざまな効果を出すテクニック。

 

 

この手法、おれの場合は

モノクロ写真の階調を豊かに表現するため、

ブラック版+補色ニュートラルグレー版、ってパターンを昔からよくやってたんです。

(このテクは成印刷の今は亡きprintingディレクター村上さんに教わった 村上さんR.I.P.!)

 

 

 

これおれがAD担当した↑NTTのB2ポスター。(この当時おれ25歳くらい)

これはスミ版と赤版、そしてグレートーンのニュアンスを最大限引き出すために

ニュートラルグレー別版(スミ版の中間トーンを強調した版)を入れている。

 

 

 

このように通常は、カラー4Cやモノクロ1C印刷だけでは再現しにくい

彩度や明度や階調を再現するために用いる印刷技術。ってのが基本中の基本なんですが

実験精神旺盛なぼくちゃん的に

補色を単にイメージを補うサポーターとして捉えるのではなく、

補色をある意味表現上の“主役”としてアートな表現ができやしないか?

と考え、

まずはスミ版の補色として、ニュートラルグレーの代わりにシルバーを用い始めたのが

おれの実験的補色使いのスタート地点。

 

 

 

 

こちら↑ショーモン国際ポスターフェスティバル ファイナリスト受賞の

KRAZY FREEPAPERのポスター。

4C版の他に、シルバー別版を入れています。

 

 

 

このKRAZYポスター、

理論上は「銀塩モノクロプリントの迫力」に近づくはずだったんですけど、

残念ながら思ってたほどの効果はなかった。。。

ラフ用紙がシルバーを吸収しちゃって、そしてシルバーも黒を吸収しちゃって

互いに殺しあっちゃったんですよね。

 

 

 

けっきょくのところ、

乗っかる絵柄のトーンによって別版のアミをどう効果的に使うか、

メタリックインク自体の濃度選びや特性、用紙とインクの相性(インクを吸う/吸わない)、

などなどさまざまなコツやテクニックの取捨選択が必要とされ、

若かった当時はこれがなかなか掴めず、結果、印刷費を1色ぶん多くかけただけで全く効果ナシ

という完璧な徒労に終わってしまった...なんてこともたびたびあったわけで...。

 

 

 

 

そんな北朝鮮ミサイル実験ばりのトライ&エラーを繰り返し、

おれなりにさまざまな実戦体験を経て、

2017年、また新たな補色テクニックでチャレンジをするぜ!

 

 

 

本書のカバーでまず目指したのは「銀塩プリント」「ポジフィルム」のような

ギラついてなまめかしい光沢感。

そしてTOKYO SNAP SHOTSとタイトルにあるとおり、

即物的であるからこそ本質を瞬間的に捉えられるスナップショットという撮影方法。

その“気分”を印刷で再現できるように、C版をベースにいろいろ改造(←ここが今回のミソ)した別版を作って

補色にメタリックブルーを入れてみました。

 

 

 

上が初校。4C+淡いメタリックブルーを刷ったもの。

下が再校。4C+かなり濃いメタリックブルーをガツンと刷ったもの。

 

 

どーです。全然仕上がりが違うでしょう。

もともとの画像データじたいはかなり黄赤が強い画像(上の校正紙に近い)です。

この写真じゃわかんないかもだけど

実物は再校の方の存在感が圧倒的にカッコイイ!

 

 

プラス1C異質な色を加えることで画面の色数も増え、ディテールも緻密になり、

ちょっと古典絵画(なんかゴヤっぽいみたいなアンバーな雰囲気も。

これは予想してなかったうれしい偶然。

色数が増え、インクの層の厚みも増すことで

むしろ用紙じたいのテクスチャーも生き生きしてきて、

当初ターゲットにした印画紙プリントやポジフィルムともまた一味違う、

印刷物でしか出せない独特な存在感がでてきました。

今回は大成功!完璧だぜ!

 

 

 

用紙選びもあえて大好きなラフグロス系を除外し、

インクのりがよく発色のよいダル系のMTA+FSを使ってみました。

メタリックブルーは順番的に一番最初に刷ってあり、その上に4Cのアミが全体一面を覆ってる感じなので

パッと見、メタリックが入ってることは言われなきゃ気付かないようにしてあります

が、

 

 

 

光の加減で↑こんな、鈍い独特の反射をするんです。

これは今回メタリックブルー別版に、ある“細工”をしていた偶然の結果。

その企業ヒミツは1000円くれなきゃおしえてやらねーけど。

にしても いやー、おれのデザインマジ冴えてるわ。偶然とはいえ

 

 

 

 

 

あ、

今回のブログ、

かなり専門的な内容になってしまいましたがみなさんついてきてますかー?

いやいいんです、ついてこれなくても。

 

テクニックがどーだ、補色がどーだ、制作費がどーだ、

そんなことはまったく重要ではなく、

けっきょく本屋さんにおかれた状態の本、自宅の本棚に差し込まれてる状態の本を見てみなさんが

 

「かっこいい!」

「おもしろい!」

 

と思う。

そこのみがおれにとって重要なんです!よし決まった!

 

 

+

 

 

 

つーわけで本書「Tokyo Snap Shots」、発売までもうしばしお待ちあれ。

なんか発売イベントもやるんだかやらないんだかいまんとこ未定ですが

発売前にもう一発くらいこのブログでもインフォームしますんで

お小遣いためてまっているんだよ?

 

 

じゃーば〜〜〜い!

(ブログ中の写真は前回の使い回しでお送りしました)