8月の新刊インプレッション

 

ワッツア!

 

またブログアップに間があいちゃいましたが、みなさん調子どう?

 

ウチはここしばらく割とハードめに入稿ラッシュが続きましたが、

年をまたいでず〜っとずっとず〜〜〜〜っと関わってきたシリーズものとかも

やっとこさ印刷所にまとめてズドンとブチ込んで、ホッと一息。

 

したり顔で請求書をまとめる 1 for the Money, 2 for the Show な資本主義のイヌ、

それがおれ斉藤啓aka BDAP

 

 

 

 

ということで本日も軽〜く新刊(といっても8月末発刊)のインプレを済ませちゃいましょう。

 

 

 

 

 

 

世渡り万(よろづ)の知恵袋

江戸のビジネス書が教える仕事の基本

著:田中優子

 

 

カバーデザイン:斉藤啓

発行:集英社文庫

仕様

判型・製本:h152mm×w105mm 並製

カバー:4c グロスPP貼り加工

 

 

 

 

 

 

集英社文庫のみなさんとのお仕事第二弾!

井原西鶴の「日本永代蔵」などの書物を江戸時代のビジネス書と位置づけ、紐解き、

「まっとうなビジネスとはなんぞや?」

てなことを現代の目線で再確認するといった内容の本です。

著者の田中優子さんは法政大学の総長であり、江戸文化研究家でもあります。

 

 

 

 

おれなりに読了した感想。

これって全般的なビジネス指南書というより、

より職種が限定された、

あけすけにいえば、上方商人(あきんど)指南書だよねーって感じ。

 

1....もともと価値の低いものを仕入れて→付加価値をつけてより高く売る、

とか

 

2....商売そのものは薄利でも→徹底的に倹約やコストカットを行って粗利はしっかり上げる

とか。

 

 

てか

日本人っていまだにこーゆう江戸時代的商売スタイルがホント好きよねー。

 

 

12も言ってることはもっともらしく聞こえるけど、

たとえば1については

紀伊国屋文左衛門の例のみかんの話

※関西で有り余っていたみかんを、嵐で閉ざされた江戸へはこび高値で売りさばき巨万の富を得た。(って知ってるよね)

に代表される儲け話って、

要は地域間の需要と供給バランスにもとづき商品を右から左へ流した

ってだけのことですよね??

 

ひるがえって近代から戦後にかけて日本が世界の頂点に立った原動力はというと

アイデアにあふれ、精度の高いものづくり だったわけで、こちらは

 「ニーズってのは新たに作るもんだぜ!」

 という、挑戦的であり、もっといえば世界のルールをも変えるパワーを持った

討って出るスタイル。

こっちの方が断然よくね?

 

 

まとめると、1については

商品を右から左に流してそのギャップから手数料を得る、いわゆるただの手数料ビジネスなわけです。

通貨ギャップで商売してる商社とかがドンズバこれに当たるのかな。

身近に引きつけて言うと、海外でブランドもののバッグ買って日本で高く売りさばき

ヒャーヒャー喜んでるセコいネット・バイヤーと商売の構造は何ら変わらないですな。

 

 

 

次は2なんだけど

究極の「商売」ともいえる国家経営を例にとって見てみましょー。

政府やメディア、評論家やおれらパンピーに至るまで

この(あえて言う→)悪しき江戸時代的倹約スタイルがいまだこびりついてるって感じる。

すなわち「緊縮財政礼賛派」がいまだ圧倒的に多いんだよね。

 

 

あれ?

もしかしてお前も

 

●国家のプライマリーバランスは常に黒字じゃなきゃいかん! とか思ってんの?

●公共事業・公共投資・ハコもの行政はおしなべて税金のムダ使い!とか思ってる?

先端技術の研究・開発に莫大な国家予算を付けることには 「2番じゃダメなんですか?」、とか思ってる?

政府のムダな支出をしっかり削減できるのであれば「増税もしかたないよね?」、とか思ってる?

お金や国債をジャブジャブ刷ってインフレーション(要はカネ余り)にもってゆくなんて「とんでもない」!

 

とか思ってんじゃねんだろな?

 

 

このバカが!

 

 

たとえばお前が、

冴えない給料の冴えない仕事を今日も終え、

古い木造アパートの四畳半の部屋に帰り、

外着のユニクロ上下を脱ぎ部屋着のユニクロ上下に着替え

ブラウン管のテレビを点けカップラーメンをすする。

明日は休日だけど日がな1日ずっとひきこもって何もしないしどこにも行かないゾ。

そうすればブタの貯金箱の500円貯金は貯まっていく一方!

わーい♪

この生活を続けていけばボク(ワタシ)の財政状況って常に超黒字

 

 

↑直視しろ!

これがお前らが良しとしてる緊縮財政の正体だ!

 

 

 

 

 

....えっと、

本書の装幀をやらせていただいてるのにかかわらず

だんだん本書DISみたいになってきましたが、それが本意じゃないんでっせ。

なのでフォローしとくと

江戸時代のプレ近代的な経済活動の中にも、現代に応用できるヒントは事実いっぱいあるし、

むしろ現代よりすぐれている部分もたしかにある。

江戸時代にベストセラーになった数々の「商売指南書」をまとめて現代語訳で読めるチャンスなんて

なかなか無いとおもうので、その意味でも本書は価値ある一冊だと思いますよ。いやホントに。

 

そのうえで

現代のビジネスにも経済にもいろんな価値基準の意見や見解があって然るべきで、

本書もその中の一つの意見・見解にすぎないのであります。

それらの意見を総合的に判断し行動するのはおれたち自身の責任なので

決して特定の利権をもった誰か(緊縮財政論で言うとまあ財務省ですよね一方の意見だけ聞いて盲信しちゃダ〜メダメよ♥

このことを言わずにおれなかったのであります。

ちろん本書は財務省の代わりに緊縮財政論を喧伝してるものではございませんので誤解なきように。

 

 

 

 

ピンクレディー / S.O.S

※とくに2番の歌詞「昔の人が〜」のパンチラインが今回のブログ内容とシンクロ。さすが阿久悠先生。

 

 

利潤追求のため企業があり、資本主義経済はそれで回ってる

ってのを当然全面肯定したそのうえで、おれは

「世のため人のため」

そのことにむかってトライ&エラーしていくことが仕事の本道だよな。

これでも本気でそう思ってるんですってば。

さっきは「バカが!」って言ってごめんね。

 

 

前段の話じゃないけど、

決められた枠の中でセコセコケチ臭い縮こまったデザインで小金稼ぎするんじゃなく

「いまより世界をもっと面白くするため」討って出るデザインに楽しく挑戦していきたいです。

 

 

てかデザイン?やばい!

本書のブックデザインのことにちっとも言及してないことに気づいた!

えー本書は、集英社から単行本として発刊された内容を文庫本化したもので

先代(?)の単行本のブックデザインはなんとあの装幀界の大御所菊地信義さん!

 

 

▲菊地信義版がこれ

 

 

菊地さん版はこの写真で見るとアッサリ目に感じるかもしれませんが、

デザイン・造本設計すべてにおいて目が行き届いているさすがのクオリティです。

その御大の精緻極まるブックデザインから、

バトンタッチしたブッダプロダクションズ版はこれだ↓

 

 

 

▲ブッダ版

 

 

おなじ本なのにデザインの解釈ってこうも変わるもんなんですね。

みなさんはどちらがお好み?

まー絶賛もDISもご意見は謙虚に聞きつつ

おれのデザインにこそ緊縮は無用!ってことでこのままいくけどな!

 

 

 

 

ということで本日はこんなところでおしまい。

あ、今回はプライマリーバランス、緊縮財政などについて、お前ら貧者には馴染みのない単語が

飛び交ったけど機会があったら調べてみたらいいと思うぞ。

経済も歴史もお仕事もデザインもブタの貯金箱

すべてのことがおれらと密接にコネクトしていることをハッキリと知るべし!