7月末の新刊インプレッション

 

ワッツア!

 

人が働く時に休み、人が休む時に働く by 池波正太郎

 

そうだそうだそのとおりだ!

わたくし不肖ブッダ斉藤 aka BDAPもこのシルバー(プッ)ウィークのあいだ

お仕事&営業活動などもろもろみっちりやらせていただとります。

 

そのうえで〜、

遅れに遅れてた新刊インプレッションを今から書くのであります。

この連休中にコツコツ書いてリアルタイムを追いかけねば!

もはや発刊から2ヶ月も経っちゃいましたが7月末の新刊のご紹介でーす!

 

 

 

 

岡本の入試化学をいちからはじめる シリーズ

 

岡本富夫

 

 

 

装丁:斉藤啓

発行:文英堂

 

仕様

判型・製本:A5(210mm×148mm) 並製

カバー:(理論編)特4c / (無機・有機編)特3c   マットPP加工

帯:プロセス4c / グロスPP加工

表紙:特1c

 

+

 

 

 

本書は文英堂のみなさんとの初仕事!

高校・化学の学習参考書シリーズ全2冊です。

 

 

それにしても化学ばけがく

なんとも懐かしい響き。

高校時代(=童貞時代)のおれは完全なる文系男子

小中学生のときは「神童」と呼ばれ(←親戚のみに調子にのっていたさすがの殿下も

進学校に入学したとたん理数系のあまりの難しさ、というか

あまりに興味がわかない学習内容のおかげで学力レベルが中国株ばりに大暴落

 

官僚へのエリートコースを泣く泣く諦めざるをえませんでした。(←うん。目指してないよね?)

 

 

ちなみにおれが入学した美術大学の必須科目は国語と英語だけ。

正直アホでも受験できまぁす♪↑

 

 

 

 

 

とはいえおおむね「お勉強」するのは好きなほうなので

デザインを手がけるうえで、本書の内容をざっくりでも把握しとかなきゃなんない!って

ともかく原稿を読んではみましたが予想通りさーっぱりわかりませんでした♪ココハドコワタシハダレ

 

 

いやたとえば分子と原子とかさ、

陽子、素粒子、量子とかさ、概念はおおざっぱにはわかるよお!

(B級SF映画とかによくでてくるモン!)

 

でも理論的具体的にそれはなにでなんの働きをしてどうなってそうなったらああなって

どうやったらあの民主党の議員たちは少しはまともになるんですか?

 

などと真顔で問われたらですね、

無言で腕組みしてその場から速やかに立ち去ることだけしか考えられません。。

 

てかそんな高校のお勉強っていったいなんだったんですかね(鼻くそをほじりながら)

 

 

 

 

 

かように大学お受験レベルで早くもつまづき

東大とか慶應とか早稲田には入れなかったおかげで、

おれが財務省事務次官になり消費税10%増税する機会は永遠になくなりましたがね。(意味不明)

 

 

それでも人にはひとつくらい世の中の役に立つことがあるよおー!

というわけでわたくしの本業、

ブックデザインの話にやっとうつりましょう。

 

 

 

 

学習参考書(出版界では「学参-がくさん」と呼びます)

のブックデザインをするにあたり

まず各書店の売り場をまわって、他社の類書がどんな印象で見えるのかを大掴みにリサーチ

その結果、高校生向き大学受験本のブックフェイス(カバー表1のことね

やはりというか当然というか、

おカタイ優等生&マジメくんがずらりと整列しています〜って印象。

 

まーそのマジメなデザインが「信用度」や「内容の充実度」や「学習しやすさ」を保証しているわけだから

それはそれでひとつの堂々たる王道であることは間違いないわけですやね。

 

 

翻って本書。

発行元の文英堂は、学研やベネッセなどのメジャー出版社に比べるとちょっと地味(失礼!)

な印象ながら、実質本位の実力派。

問題や設問内容の練り込み・充実度・学習しやすさにはすこぶる定評があるのです。

(amazonレビューとか読むと文英堂の学参は高校生からの評価がかなり高い)

 

トヨタというよりスバルorマツダって感じ?

 

 

くわえて本書は、基礎〜標準レベルの比較的平易な(※再度言う。おれにはサッパリだった)学参

ということもあり、担当編集Sさんの「とっつきやすさ・親しみやすさを出したい」

という意見も大きく取り入れて、

ここは思い切って学参の「質感」からちょっと変えてみようと思ってデザイン作業をスタート。

 

 

 

 

「質感」を変える、

っことを具体的に説明するのはひどく難しいけど、

その本のジャンルやカテゴライズがあらかじめ纏っている前提常識縛りから、

フワッと軽やかに逸脱する、もしくは解放する。っていうイメージ、かな。

 

ブックフェイスの要素って、おれの考えではざっくり3つあるんだけど

 

1.グラフィックデザイン

2.色彩設計

3.触覚 手に持ったときの用紙の感覚や造本など

(2と3は印刷加工含む)

 

この3エレメントにおいて、ちょっとずつ違和感をプラスすることで、

ジャンルの縛りから少し浮遊した状態にしといて

売り場で目立つ=売り場で手にとらせるためのレトリカルなテクニックというか。

 

 

 

逆に言うと、超革命的で奇抜なデザイン高価な印刷技術を使い放題

ってことをやれば超グッドなブックデザインが完成するわけじゃあ、当然ない。

前述の3エレメントを欲張りすぎ&ハミ出しすぎれば、

その本が前提として持っていたジャンルやカテゴイライズそのものをシャットダウンしてしまうことになり、

 「なんの本かわからない....」

 と、

売り場で読者が混乱することがあればそのデザインは失敗。

本だけに本末転倒、なわけであります。

(作為的にカスタマーの混乱を想起させるためのデザイン、とはまた別の話ですYO)

 

 

 

 

まーでもね、

どんな理屈で言いくるめようとしても、要はブックデザインって、

いまだ本の姿をしていない、クリップでとめられた原稿の束が呼びかける

 「こんな本に生まれたい....」

という小さな声。

その声を懸命に聞こうとする作り手側のアティテュードこそが重要なんじゃないかなと思います。

 

その小さな声はときに原稿の中から聞こえるときもあるし、

ときに担当編集者や営業さんの口を借りて聞こえるときもある。

その本とはまったく関係ない書籍や映画や絵画から、

ときには、遠い少年時代の記憶から聞こえるときもある。

 

 

 

 

おっと、話を元にもどして、

本書の「質感」なるものを具体的にどーしたのよ?

 の話ですが、

さきほども触れたとおり学参らしさをふまえると

高価な用紙を用いて手触りに上質感を与えまショー、とか

ハードカバーにして一流カメラマンの写真を使ってホログラム加工を加えまショー

ってやり方は、違う。(たとえやりたくっても予算的に×ブー×)

 

なので本書は「色彩設計」に重きを置きました。

ブックフェイスのグラフィックデザインそのものは、

ちょっとカジュアルなフォントにして、くだけた印象にはしましたが、

あくまでフツーの学参の範囲内ギリギリに設定しておき、

シルバー蛍光色という類書にはない強い色彩の組み合わせを用いました。

 

 

 

 

 

 

イマジン!

 

想像せよ!シンプルなベージュのトレンチコートを

ある朝クロゼットを開けたらそれが明るいブルーに変わっていたところを想像してください。

お気に入りのネイビーブルーのスカートが、シルバーに変わっていたところを想像してください。

カタチはそのままなのにガラッと印象が変わるはず。

 

ディテールやシルエットそのものには冒険を求められない(する必要がない)モノであれば

もっともスピーディに「質感」を変える方法は、

バカみたいに単純ですがやっぱ色こそもっとも効果が大きい。わけです。

 

 

 

 

と、口でいうのは簡単ですが

印刷物の色指定ってのは、正直20ウン年この仕事をやっててもやっぱり難しい。

デジタルのモニター上の発色と、現実世界の色は大きく異なるので

MACでも完全にはシミュレートできないし、むしろデジタルを盲信すると大きな誤差が出る作業。

DICやPantoneの市販の色チップをあれこれ見比べながら

最終的にはカンと経験を使って結果を予想することしかできない超アナログ作業なのです。

 

 

じゃーどうすればうまくいくの?

 

と問われれば

結局、気の済むまで出して、最終的には見た目で判断することしかできません。

このデジタルでグローバルでイット革命(by もりよしろう)な世界なのにもかかわらず

色校を出して→見て→修正→ブラッシュアップ。本当にこの方法しかないんです。

 

 

にもかかわらずこの浮世は色校一回のみで責了を求められる東京出版業界砂漠!

「印刷技術だけで本のクオリティは20%上げられる」

って持論を持つおれから一言、

コラ!印刷予算をケチってんじゃねえ!

 

 

 

しかしですねみなさん、

良心ある方々は間違いなく出版業界内にも存在します。

本件は、ま〜こ〜と〜にありがたいことに

文英堂のみなさんの全面的な暖かいご理解・ご協力をいただきまして

事前にカバーのみテスト入稿実施!

色校を実験的に気のすむまでいろいろなパターンで出させていただきました。

 

 

 

 

いやーありがたいありがたい。

ってかこのスタンスがフツーにならなきゃモノ造り大国の名がすたるぜニッポンよ!

 

 

テストした蛍光色はオレンジ・ピンク・グリーン・ブルーの計4c、

あがってきた色校をおれはもちろん担当編集さんや営業さんなど大勢がぐるりと取り囲み、侃々諤々のなか

本書のイメージにあう色はどれか、発色度合い、耐光性、PPありなし、仕上げはマットかグロスか、

写真部分の印刷線数はどーか、などを細かく指摘し、それをふたたび色校にフィードバック

 

 

 

 

これを繰り返した結果、

地色はシルバー90%(10%紙地を出すことでアッケラカンとした1円玉みたいなシルバーになる)

蛍光色はピンクとオレンジに決定(ブルーもよかったんだけど耐光性に難アリ)

蛍光オレンジのみ可読性アップのため200%(二度刷り)

著者の顔写真のみスクリーン線数を通常175線程度から60線に変更(網点が大きく荒くなるが、メリハリがアップして見やすくなる)。

 

などなど、仕様は確定。

 

現場(印刷会社)は京都なので刷り出し立会い出張はかないませんでしたが(基本おれは行ける現場はぜんぶ行きます)

おおむねベストな感じで仕上がったンではないでしょーか!!

 

 

 黒板風のオビ(2冊共用)をくっつけてぶじ完成!とあいなりました。

はあーめでたしめでたし♪

 

 

 

 

 

ん?何?

 

「こんな専門的な話されたってアタシわかんな〜い」

 

だぁ?

いいか聞けこの白痴!

こんなもん高校化学より1億倍簡単だっちゅーの!だっちゅーの!だっちゅーの!......

 

 

 

 

 .......

 

ヤア!高校生のみんな(^-^)/

おれみたいな人間にならないために本書を買ってうんと勉強するんだよ!ヤクソクダヨ!

 

 

 

+

 

 

 

ということで今回はおしまい。

さあ、次はどんな本が発刊されるのか、次回の新刊インプレッションまで、

 

ブログ読書よ、震えて眠れ!ビシッ!

 

(いまだこのコーナーの決めゼリフが流動的)