輝け三宿映画祭2011 ベスト3位!のつづき
インドの夜行列車の中、
おれが眠い目を血走らせながらバラナシ到着を待ち構えているところ....
+
なのですがー、ここで閑話休題。
インド珍道中はちょっと脇に置いときまして、
去年末から持ち越してる三宿映画祭2011のベスト3の結果発表をやっちゃいます!
まさか誰も待ってないってことはないよな
さあ、あらためてベスト3位はこれ!
猿の惑星:創世記(ジェネシス)(監督:ルパート・ワイアット 2011年公開 アメリカ映画)
製薬会社につとめるウィルは、父親のアルツハイマー治療のため新薬を開発、実験台の母猿に投与。その薬の副作用として母猿は凶暴化し射殺される。が、ウィルが引き取ったその仔猿(シーザー)は、温かい家族にかこまれ幸福に成長、それにつれ驚異的な知性を発揮してゆく。ある日、ウィルの父親を守るため隣人を襲ったシーザーは、精神病院のような猿の保護施設に収監され、人間に対して深い絶望を抱く...
前回尻切れトンボになった猿の惑星シリーズ検証(12/17のブログを見よ)の続きを書くと、
本作はね、ついに出ました!
猿の惑星シリーズ中、最高傑作!!とおれは言い切っちゃう!
第一作目「猿の惑星」のある意味牧歌的な、寓話的・神話的スタンス
それ以降のシリーズ全作にハッキリ漂っていた人種問題のメタファー
本作はそれら所謂〜猿の惑星らしさ〜を思いきって全部捨てて(!)、
リアルな現代社会を舞台に、そこで現実に生きている
おれらの目線であらためて猿の惑星を語り直そうとした制作者たちの英断!
まずそれに心打たれる。
今作っていわゆる
メイド・イン・ハリウッドの正統派エンタテインメント!!
旬の俳優とCGをふんだんに使ったビッグバジェットSFアクション!!
であることは間違い無いんだけど
人間ドラマ(というか猿ドラマ)の描かれっぷりがハンパなく繊細で丁寧!
そしてひたすら、ひたすら熱い!
ひじょーに誠実に、大事に大事に作られた映画だってのは一目瞭然!
ハデなSFアクション、革命家もの、脱走もの、葛藤を乗り越え英雄が誕生する瞬間を捉えたヒーローもの
などなど、色んな映画ジャンルのおいしい〜ところを、絶妙な手つきで再編集した結果、
ストーリーはあくまでもオーソドックス。
それが超キビキビしたスピーディなテンポで息をつかせる間もなくムダ無く進む。
長編たった2作目のこの監督、マジでどんだけウマいんだ!!
喜怒哀楽すべての感情をあの手この手で刺激することによって
物語の多少の荒唐無稽さとか描写の薄い部分なんて観客に気づかせぬまま、
ストーリー展開と、登場人物(というか猿)達にグイグイ引き込まれる。
アクション映画としてそれだけでも大成功なのに、
本作はヘタなヒューマン・ドラマよりも、1000億倍ヒューマン・ドラマしてます。
主人公とアルツハイマーの父親との親子愛
主人公とシーザー(チンパンジー)との親子愛
この2つの「愛」を、ガッシリ太い主軸に据え、
愛ゆえこその行動からおこる正しいこととまちがったこと。
宝石のような幸福と、とりかえしのつかない悲劇。
主人公たちにも猿たちにも、そして悪役の登場人物たちさえにも
このさまざまなスタイルの「愛」、そして「憎」のエピソードがもりこまれます。
上司と部下
主人公と恋人(インド人!)
保健所の父親と屈折した息子
チンパンジーと猿の仲間たち
イジワル隣人とその子供
直接的悲劇のきっかけとなるこのイジワルな隣人にもちゃんと子供がいて、そこには愛がある。ってとこも実にさりげなーく描かれててホントうまい脚本&演出だなーとうならされる
この人間関係の断片ひとつひとつが、必然性をもってどんどん線でつながるがごとく
スピーディに・ムダ無く物語が語られることで、
この映画を重層的・多面的にみせることに成功している。
その点のひとつひとつはそれぞれに非常に重いテーマを持っているんだけど、
鑑賞後感はめちゃ軽やか!
ウェットに泣かせるシーンなんてひとつもないのに、
ラストの勝利のカタルシス!からシーザーの勇気ある選択を見せられちゃあ、
涙が止まりゃしねえ!
シーザー、お前は男の中の男だ!
+
そしてもうひとつ
この映画を語る上でぜったいハズせないのがCGの猿たちの名演技!
いくら脚本がよくできてても、CGの猿がCG臭いと一発でシラケるところです。
(ティム版の猿メイクが、なんか...シラケたように)
CG合成というと役者がグリーンバックの中で一人で演技して、
プリプロの段階でCGをはめこんで、ハイできあがり〜、と思うでしょう?
でもこのやり方だとやはり、なんか画面全体がウソっぽくなるというか、
役者から真剣さや切実さが引き出せてないというか。
いわゆるCGで合成しました感がビンビンでこちらもノレないんだよね。
(SW ep1は最初から最後までなんだか白々しかったよね...)
そこで本作はキャラクターキャプチャー、
そしてエモーションキャプチャーという最新CG技術を投入!
見ての通り、
猿の演技や表情はすべて実際に役者さんが演じているのです。
その表情や動きをポインターでマークし、CG描画のベースにするという最新テクノロジー。
(ジョニーデップのランゴでも話題になりましたよね)
この超ハイテクかつ、ある意味超アナログなやり方が、
飛躍的にCGキャラの実在感をきわだたせてるし、
だからこそ自然にシーザーに感情移入ができるってわけなのです。
映画だけじゃなく、もしかしたらアート全般って
作家の「センス」とか「才能」ももちろんなんだけど
実は「最先端の化学・科学」がぜったい必要なんだなぁ、と再確認しました。
パピルス、紙、テンペラ、油彩、アクリル絵具。
木版画、活版印刷、シルクスクリーン、ビデオ、コンピュータ....。
どの表現方法もその時々の先端テクノロジーであったわけで、ね。
そしてもうひとつ感動したのは、
シーザー役のアンディ・サーキスさん。彼が言うには
エモーション・キャプチャーのための演技プランがなかなか共演者に理解されないこともあるそう。
正直「アンタ、なにやってんの?」って冷笑を浴びせられたことも想像に難くない。
陰でみんなに笑われても、最初は誰にも理解されなくても、
熱い信念をもって全力でやりきる人間だけがネクスト・スタンダードを産み出す!
アンディ・サーキスさん、あんたも男の中の男だ!
+
長くなってきたから、けつろーん!
本作、高尚な芸術映画でもなければ、見たことも無い新しい概念を提示する映画ではない。
自由の女神がぶっこわれてたーみたいなトラウマ的インパクトもありません。
大人も子供もみんなが楽しめるエンタテインメント。
でも、
誰もが好きなオーソドックスな物語を
現代できうる最新のテクノロジーで語る。
こんな最も正しいことを、
熱い情熱と才能と愛情を持った作り手たちが、ビッグバジェットを投入して
マジで血のにじむような努力をして作りこまれた映画。
そんなの、素晴らしくないわけないじゃん?
血沸き肉踊る、哀しくせつない英雄譚、
猿の惑星:創世記(ジェネシス)、堂々の3位です!
お前ら、窓のくだりで絶対泣くぞ!
3位決めるのにけっこう迷ったのが
同じくハリウッド製ビッグバジェット映画。ちょっと風変わりなSF設定を舞台だてに親子ドラマを見事に描いた
ロボット版ロッキー、リアル・スティール
まだ公開してるから絶対観たほうがいいよー
そして
期待の新鋭ダンカン・ジョーンズ監督の、これまた風変わりな風変わりなSF、ミッション:8ミニッツ
ちょっと小松左京や筒井康隆のSF短編っぽい手触り。(前作「月に囚われた男」もそうだった)
人間の存在価値ってどこで決まるんだろう?ってとこまでサラリと描ききり、ラスト近くには映画史に残るであろう感動の名シーンあり!
2作ともなんというか男らしくすがすがしい作品です!
ぜひ観てみてね!