豆腐基地外

 

東京都下、三宿某所。

外の冷気を忘れたかのごとく、熱気がこもったスタジオの中に、

続けざまにカメラのシャッター音が聞こえる。

白バックにむかって何やら動きまわる2人の男たち。

一人は対象をなめまわすようにねっとりとレンズで追うカメラマン。

その後ろで口やかましく指示を出しているもう一人の男。

どちらのの顔も紅潮し、額に汗を浮かせ、卑猥な笑みをうかべきっている。

そして…、

白バックの中央で、大きなレフ板や黒いパネルにかこまれながら

恥ずかしそうに寝そべる純白の白い肌。

 

カメラマン 「殿下、こいつ…こいつ、ぜんぶひっぱがしてやりましたぜ…」

 

 「ああそうだな、いやはや…もう身体中びっしょ濡れじゃねェか…ン?たまらねェ…」

 

カメラマン 「殿下、こいつ…ちょっとでも触ったらくずれちゃいそうッスよ、ひっひっひっ」

 

 「へっへっへ…ちょいとばかし手荒に扱ってもかまいやしねぇぜ。代わりはいくらでもいるんだ、」

 

カメラマン 「殿下、見て下さい、こいつ…こいつプルプル震えてますぜ…?」

 

 「ああ、しかも…しかも見てくれ、こいつぁ上玉だぜ。

体が絹のように真っ白でなめらかじゃァねえか?…

 

 

カメラマン 「まあ絹ごし豆腐ですからね。」

 「ああ、そだよね。豆腐だもんね。」

 

 

というわけでワッツア!

 

エロ小説ばりのオープニング・シークエンスに、

「すわ、殿下も“表現の自由”に挑戦か?」

 

こほん(咳払い)。

まず言っておく。そんな読者のゲスな期待に添えなくてまことにすまん。

責任も、ましてや結果も背負わないことが自由だというのなら

おれは一生それに囚われた不自由なままで上等だ!

YO! おれが斉藤啓 aka BDAP!

 

こほん(咳払い)。

さてさて冒頭の豆腐は、新刊文庫のカバーための写真撮影(どんな書籍だ)の一コマ。

なかなか面白い本なので発売をお楽しみに〜。

ってのはいいんだけど

さまざまなメーカーのさまざまな豆腐を大量に買い込んで撮影に臨んだので

豆腐が11丁も余ってしまいました。

 

ご存知のとおり、

食材としての豆腐って“足が早い”(すぐに痛んでしまう)。

といっても捨ててしまうにはモッタイナイ。

今回の豆腐撮影を仕切った責任と結果をおれが全身全霊で受け入れるとしよう。よし、

台所に火を入れろ!

 

MI4 Ghost Protocol /Opening Title

 

まず撮影でボロボロに崩れた豆腐を「炒り豆腐」に。

にんじん、ねぎ、ササミが入っています。お酒の肴にぴったり。

 

 

しっかり重しをして水気を切って、半分くらいの厚さになった豆腐を、

フライパンに牛脂をひいてこんがり焼いたら

 

「豆腐ステーキ」に!フライパンに残った牛脂に酒と醤油を注いで煮詰めた和風ソースをたっぷりかけて。

付け合わせはいんげんの塩ゆでと、長芋と人参のグリル。おいしいよー。

 

「白和え2種」

豆腐をすりつぶして砂糖や塩で調味した衣で、野菜などを和えたものが白和え。

これはいんげんとにんじんとこんにゃくを和えたもの。

 

こちらは菜の花を和えてみました!ほろ苦くてうまい。

 

「豆腐田楽」自家製の甘い山椒味噌を塗ってこんがり炙りました。

 

「麻婆豆腐」!おれの大好物ナンバーワン。

甜麺醤と豆板醤と麻辣醤はもちろん、八丁味噌もちょっぴり入れた自家製。

丸美屋、味の素、中村屋、聘珍楼etc…。スーパーで売ってるレトルトの麻婆豆腐の素はぜんぶ試したけど、

自家製のがけっきょく手軽で味もいい。

(cookdoは最近“トロミづけ不要”になってからがくんと味が落ちました)

 

「きつね炒り豆腐」最初の炒り豆腐をたくさん作りすぎて飽きてきたので

油揚げの中にチーズとともに挟んで焼上げました。乙な味。

 

「湯豆腐」。たっぷりの大根の千切りに、豚バラをすこしだけ。

ポン酢ではなく“そばつゆ”につけて食べるのがブッダ流。

 

「あんかけ豆腐」。濃いめの出汁を葛でとめてとろーりとドリップ。

なんだかアーティスティックな料理です。レモンの皮をあしらいました(スーパーの柚子は高い)。

 

「蟹豆腐」。出汁でカニ缶と、エリンギと黄ピーマン(黄ニラを使いたいとこだけど高い)の賽の目を

薄味でさっと煮込んで葛で薄くとめて、おろしショウガをのせました。この葛餡をご飯にかけたらもう最高。

 

「豆腐チゲ」。さいきんめっきりニュースバリューのない韓国。せめてこれを食べて世界へナッツリターン!

あ、牡蠣をたっぷり入れて出汁をとりました。

 

そして最後は、

冷凍庫で凍らせたこの豆腐を…

 

水で戻すと、自家製「凍み豆腐」のできあがり!

高野豆腐のようにスポンジ状にはならないけど、ひだひだができてちょっと乾物の湯葉みたいな感触になります。

 

これを干し椎茸の戻し汁でとった濃いめの出汁で炊きます!

 

その隣のコンロには同じ出汁で煮込んだ根菜たち。

じっくり味を煮含ませて3時間後くらいに両者が合体!それがこれ、

 

「お煮染め」です!

蓮根とにんじん、干し椎茸とゴボウ、里芋、そして凍み豆腐。ばっちり味が染みてます。

濃いめの味付けが酒によし、そして飯によし!

 

 

というわけで豆腐11丁、難なく完食!(ホントに数日間で一人でぜんぶたべちゃいました)

味付けもいろいろ変えたのでぜんぜん飽きませんでしたYO♥

 

かように、

豆腐という縛りの中にも限りなき可能性がある。

「何にも縛られない」とうそぶきながら、大きな責任や義務を拒絶し罵倒することのみが

自由な人間の資格だというのならば、

ケッ!おれはそんなものには永遠にツバ吐きかけつづける。

制限や責任を甘んじて受け入れてこそ、一歩一歩進化し磨かれるクリエイティビティ。

遠回りでいい。カッコ悪くていい、地味でいい。

おれはそっちの可能性に賭けてみるつもりだぜ!

 

 

あれ?

大豆を食べ過ぎたらなんかストイックになった気が。

よっしゃ、今夜は脂ギトギトの高級牛肉でもむさぼり食い、

赤ワインでもガブ飲みにいくとするか!

今夜はパーティだぜキャッハー!