輝け三宿映画祭 ベスト3位!
ワッツア!
さっそくいくぜ第三位!
猿の惑星:創世記(ジェネシス)(ルパート・ワイアット監督作品 2011/アメリカ)
猿が人間を支配する世界を描いたSFクラシック猿の惑星の前日譚、というか猿の惑星シリーズそのものを新しい切り口でゼロから語り直そうと作られたリブートもの、と言ったほうが正しいか。現代アメリカを舞台に、遺伝子工学で突然変異をおこした一匹のチンパンジーが人間に裏切られ、仲間の猿を率いて人類との対決に立ち上がる。
本作、制作情報を聞いたり予告編を観た時点では、
「いまさら猿の惑星かよ?」って、おれは正直そんな冷めた感じでした。
そう感じたのはなぜかを説明するためにも、過去6作の「猿の惑星シリーズ」を
おれがどう捉えてるか、それをまずは語らせてくれ。
第1作目「猿の惑星」 1968年公開(←おれが産まれた年!)
おれはたしか小学生くらいにテレビの洋画劇場で初めて観ました。当然というかやっぱりというか、トラウマ的衝撃を受けましたよ。
猿が地球の支配者であり、暴力的・残虐に人間を生け捕りにして奴隷としてコキ使う、というおぞましい世界観(原作者が日本兵の捕虜になった経験を基に書かれたストーリーってのは有名な話)にまずはビックリ。そして猿の特殊メイクの素晴らしさ。個性あふれる猿キャラクターたち。とくにチンパンジーたちのユーモラスさシニカルさ。登場シーンのゴリラたちの有無を言わせぬ恐ろしさ。
そしてなにより伝説のラスト。これが映画史上トップクラスのショック・シーン!
当時の世界の、核の脅威・世紀末にむかう終末論ムード、などを漂わせる、このフレッシュなビジュアルショックには、心底震え上がりました!よい映画やアートを見たあとって、現実を違う視点で見ることができるようになるよね。
でもね、今観直してみるとこの第1作目。
あきらかにストーリーとしては適当だったり曖昧だったり...もっと言えばズサンな部分もけっこうある。そのうえ、このストーリーの肝ともいえる猿と人間の緊張関係が意外になぁなぁだったり...。ストーリー進行のゆったり感もあいまって、全体の作りがけっこうヌルいってのは間違いないと思います。同じ年に公開された、これもSFクラシック「2001年宇宙の旅」を観れば、本作の映画的・SF設定的ヌルさ具合はけっこう歴然。
今では本作って「ハードな文明批評論」って観点から評価されることが多いと思うんですが、実はもっと牧歌的な「教訓があるお伽話」に近いっておれは感じるんですよね。
本作のバランスに一番近いものって、「ギリシャ神話」とか「日本の神話」とかではないかな。ストーリーがいきなり飛躍してたり、登場人物の心があっさり転向したり、意味も無く残酷になったり寛大になったり....。ちょっと不可解な展開が多いって意味でストーリーテリング上のバランスがよく似てる。
でもヌルいからダメ映画!って言ってるわけじゃぜんぜん無いんですよ。
ヌルめで曖昧、言い換えると自由で柔軟なベースがあるからこそ、斬新なアイデア発想・制作者のイマジネーション・それを具現化するテクニックを活かせたともいえる。その奇跡的なバランスが大きなマジックを産んだ作品だと思うんですよね。おれはこの第1作は、時代を切り拓いた不朽の名作だと思うし、大好きな映画であるんです。
で、第一作の大ヒット&好評価をうけて、シリーズはドンドン量産されていきます。
第2作目「続・猿の惑星」(1970年公開)はさらに核の脅威にスポットをあてたり、
第3作目「新・猿の惑星」(1971年公開)は、今度はなんと猿がタイムスリップして現代アメリカにやってきたり、
第4作目「猿の惑星・征服」(1972年公開)はもろに黒人革命のメタファーとして猿を描き、
第5作目の「最後の猿の惑星」(1973年公開)も人種間の緊張と理解への努力を描いていた。
これらのシリーズ続編4本をおれなりに総括すると、
制作者たちは、猿の惑星第1作で構築した世界観を用いて、その時代時代のタブーに踏み込んだ文明批評を、誰もが楽しめるエンタテインメントとして語ろうとした、って感じなんじゃないかな。どの作品も見るべきところがあるんだけど、しかしどれも残念ながら第1作目のインパクトを超えるものではなかった。
種族間の緊張、そしてその劇的な置き換え。っていうものスゴいコトを第1作目で軽々とやりきっちゃったのが仇となったのか、続編4本はその呪縛から逃れられず、セルフ亜流感が強い作品になっちゃった。シリーズ内でエピゴーネンを延々と繰り返してると言うかね。なんか深夜テレビで放映されるのがちょうどよさげなB級映画クオリティなんですよね。B級はB級なりに、軽い気分で観るぶんにはおれは十分楽しめましたけど。(今回あらためて全作品を見直した)
でここからが由々しき問題、
悪名たかき第6作目「Planet of the Apes/猿の惑星」2001年公開
1973年以来沈黙していた本シリーズを、2001年、なんとあのティム・バートンが再映画化。しかも今作はただのリメイクではなく、監督いわく「リ・イマジネーションである」。おお!ってことで、好事家たちは色めきたったものです。
ティム・バートン監督の得意とする(当時の)作風といえば、悪趣味かつキュート。クレージーだけどどこかせつない。つねに、弱者やマイノリティへの愛情&優しい視線を持ちつづけているティム・バートンが、猿の惑星シリーズという大きな山脈を、どうフレッシュに再解釈するのか?はたまたいかにハデに楽しくブっ壊すのか?
なんてワクワクしてたんですが、
本作の感想は....「え?ティムよ、こんなもんでいいのか?」
ただのB級作品をムダにもう一個作っちゃった感じ....
ティム・バートンなりの猿の惑星を期待してたらこれが全くのハズレ。世界観の設定もストーリーも、本家をなぞって細部をちょこちょこ手直しただけ。フレッシュな切り口なんて見られないって感じ。しかも肝心のストーリーがまったき面白くない....。
前作から30年近く経ってるわけだからもちろん特殊メイクだって進歩してるはず。鳴り物入りの新猿メイクにもすごく期待してたんですよ。わかりやすいようにあえて乱暴に書くと
従来版の猿メイク=役者の顔にマスクをすっぽり。目と口元でしか演技できない感じ
ティム・バートン版猿メイク=役者の顔に可能なかぎり直接メイク。役者の表情全体が演技に生かせるようになりました
と、言葉に書くと、進歩じゃん!って思うんだけど、じっさいにはやっぱりダメ。従来版の猿メイクを初めて見たときのインパクトをぜんっぜん超えられてなかったんですよー。名優ティム・ロスはがんばってたけど、ヘレナ・ボナム=カーターの猿メイク....マジ無いわ....。
しかも猿たちの性格描写やアクションの解釈がただ単に「過去作品より野性の猿っぽさが増しました」とか...。カクっ、て。てか、ヤル気ないんだったら猿の惑星シリーズに手なんてつけないでくれよ、
オイ!ティム!コノヤロー!
とおおいにガッカリさせられたわけですよ...
もう猿の惑星っていう素材じたいの偉大さゆえにイメージが固定化されすぎて、制作側がイマジネーションを働かせる隙が無いんじゃないんだろうか。そしておれたち観る側も受け取るイメージの許容範囲が狭くなっちゃってるんじゃないだろうか?
「猿の惑星の新作はもう永遠に封印して、DVDで旧作を観てればええ...
「それでええのんや....」
ってきめつけちゃってたおれ。
が、しかし!
.....てか、やっと
猿の惑星:創世記(ジェネシス)に話が戻った....
......や〜マジで映画評書くのって骨折れるわ.......
ということでベスト3位 猿の惑星:創世記(ジェネシス)評は次回に持ち越し!!!
ごめん!!!次からはもっとテキパキ語る!!!